01.08.2018 | カテゴリー, Tax
約30年ぶりとなる大きな税制改正案(改正法)が大統領の署名をもって発布されました。
今回の改正法は、通常の立法方法である議会の60%以上の賛成による法律成立ではなく、この改正法による今後10年間の税収減が$1.5兆ドル以下であるという法律を成立させることにより単純過半数で立法が可能になるという方法を選択しているために、個人所得税に関する法律は時限立法となっているようです。その場合適用期間は基本的に2018年から2025年までとなっています。
私共もまだ詳細は分かっていない点が多数あり、簡単で恐縮ですが、速報として今回の税制改正における変更点のうち、個人とビジネス(法人)に大きな影響を与えるであろうと思われる点を下記列挙してみました。後日、日本語にて詳細説明を掲載する予定にしておりますのでもう少しお待ちいただけると幸いです。大変粗いご説明となっていること、影響するであろう全ての項目を網羅していないことご容赦下さい。
また、下記リンクは英文となりますが、個人及びビジネスの大きな変更点につきまして、詳細がまとめてございますので是非ともご参照下さい。
個人: https://www.thetaxadviser.com/news/2017/dec/tax-reform-bill-changes-for-individuals-201718070.html
法人: https://www.thetaxadviser.com/news/2017/dec/tax-reform-bill-changes-for-businesses-201718071.html
個人
適用される税率は旧法と同じで7段階のままでしたが、旧法では10%、15%、25%、28%、33%、35%、39.6%だったのが改正法では10%、12%、22%、24%、32%、35%、37%と若干低くなりました。新法の下でそれぞれの税率が適用される課税所得の額につきましては、上記リンクをご覧下さい。(改正法適用期間:2018年1月1日から2025年12月31日まで)
旧法では合算申告の場合2018年は$13,000、独身の場合$6,500となる予定でしたが、改正法では合算申告の場合2018年は$24,000、独身の場合$12,000となりました。(改正法適用期間:2018年1月1日から2025年12月31日まで)
旧法では州所得税と固定資産税が所得控除の対象でしたが、改正法では基本的に州税と固定資産税は合計で$10,000までしか控除できなくなりました。また、旧法では外国で払った固定資産税が所得控除の対象でしたが、改正法では控除できなくなりました。(改正法適用期間:2018年1月1日から2025年12月31日まで)
旧法では自宅及び2件目の不動産(賃貸以外)に対するMortgage Interestは元本が$1,000,000までのローンに対する利息であれば控除対象でした。また、Home Equity Loanとして$1,000,000以外に$100,000までのローンに対する利息も控除の対象となりました。改正法では元本が$750,000までのローンに対する利息のみが控除の対象になり、Home Equity Loanの利息は控除できなくなりました。2017年12月15日までに借り入れを行ったMortgage Loanはそのまま$1,000,000までの元本に対する利息が控除対象となります。(改正法適用期間:2018年1月1日から2025年12月31日まで)
旧法では2018年は一人$4,150の人的控除がある予定でしたが改正法では人的控除は廃止されました。夫婦合算申告でお子様が一人いらっしゃる場合、$12,450($4,150 x 3)が所得控除できなくなったことになります。上記2のStandard Deductionの$13,000と合わせると旧法では$25,450 ($13,000 + $12,450)の所得控除ができていたことになりますが、改正法のStandard Deductionでは$24,000だけになってしまったということになります。(改正法適用期間:2018年1月1日から2025年12月31日まで)
旧法では、課税所得を計算する時には、収入から上記の2 Standard Deductionか3 Itemized Deductionのどちらか大きい方と4 Personal Exemptionの合計額を控除することになります。旧法ではStandard Deductionは$13,000でしたが、州に所得税を払い、日米に不動産を借り入れをして所有している場合には、州所得税、日米で払った利息(元本が$1,000,000までのMortgage Loan と 元本が$100,000までのHome Equity Loanの利息)、日米で払った固定資産税の合計額が$13,000を超えている場合には、Itemized Deductionとしてその合計額が控除できました。また、旧法ではPersonal ExemptionはItemized Deductionとは別に控除できていましたが、改正法ではなくなってしまいました。
従いまして、改正法下では高い州所得税を払っていて借入で自宅を購入している納税者にとっては旧法よりも控除額が少なくなると見込まれます。カリフォルニアやニューヨーク、ニュージャージ等の州は州税率が高いのでこれらの州に居住している納税者は影響を受けることになりそうです。ただ、旧法でも州所得税や固定資産税はAlternative Minimum Tax(代替ミニマム税)を計算する上では所得控除ができないので、改正法における実際の影響はケースバイケースとなると予想されます。
旧法では適格引越費用(駐在員の方の場合には本人と家族の渡米の飛行機代と家財の運搬費及び帰任時の飛行機代と家財の運搬費で要件を満たした額)を会社が負担した場合には非課税でしたが、改正法では軍関係者以外にはこの非課税制度がなくなりました。また、旧法では個人で負担した適格引越費用は控除対象でしたが改正法では控除ができなくなりました。ほとんどの場合、これらの費用は会社が負担されていると思いますが、改正法下では全額が課税所得となります。(改正法適用期間:2018年1月1日から2025年12月31日まで)
Capital Gainにかかる税率は改正法も旧法と同じ税率が維持されました。
旧法では要件を満たしたお子様がいらっしゃる場合、Child Tax Creditとして一人あたり$1,000の税額控除が取れました。改正法では$2,000となりました。また、お子様以外の扶養家族がいらっしゃる場合には$500の税額控除が取れるようになりました。旧法では合算申告で$110,000の課税所得があると$1,000のChild Tax Creditは全額減額され控除ができませんでしたが、改正法では$400,000の所得にならないと$2,000の全額は減額されません。
しかし、$2,000のChild Tax Creditを取るためにはお子様がSocial Security Numberを持っていることが条件に加えられました。もしお子様がSocial Security Numberを取得できず、IRSが発行するIndividual Taxpayer Identification Numberを持っている場合には、お子様は上記の「お子様以外の扶養家族」と看做され$500のChild Tax Creditの対象となるようです。(改正法適用期間:2018年1月1日から2025年12月31日まで)
Alternative Minimum Taxを計算する上で控除できる額が合算申告の場合、旧法の$84,500から改正法では$109,400に増額されました。このためAlternative Minimum Taxが適用される納税者は減るものと予想されます。(改正法適用期間:2018年1月1日から2025年12月31日まで)
ビジネス(法人)
旧法では累進課税率で15%、25%、34%、35%となっています。改正法では一律21%となりました。(改正法適用開始時期:2018年1月1日に始まる課税年度より)
2017年12月31日が決算日以外の法人の場合、旧法と改正法の両方の税率が適用されることになるようです。例えば2018年3月31日が決算年度の法人の場合、年間の課税所得に旧法の税率を適用して計算した暫定税額と同じく年間の課税所得に改正法の税率を適用して計算した暫定税額をそれぞれ2017年4月1日から2017年12月31日までの日数と2018年1月1日から2018年3月31日までの日数で案分した額の合計額が2018年3月31日決算の期の税額になるようです。
旧法では20%でしたが、改正法では廃止されました。(改正法適用開始時期:2018年1月1日に始まる課税年度より)
旧法ではその年度に購入した適格固定資産の額が$2,000,000以下であれば、$500,000まではその年に一括損金計上ができます。改正法ではその年に購入した適格固定資産の額が$2,500,000以下であれば、$1,000,000まではその年に一括損金計上ができることになりました。これらの額は一定の関係会社を1社と看做して計算されますので、仮に自社の固定資産購入額が基準値以下でも関係会社が固定資産を購入している場合には、それらを併せて判断する必要があります。(改正法適用開始時期:2018年1月1日に購入した固定資産より)
旧法ではその年に購入した適格固定資産で上記3の一括損金計上をした場合には損金計上した後の額、損金計上していない場合には購入額の50%を一括償却できます。改正法では、2017年9月28日以降2022年12月31日までに購入した適格固定資産の全額が一括償却できるように変更されました。(改正法適用開始時期:2017年9月28日以降に購入した固定資産より)
旧法では法人が計上した一定の利息(外国関連会社に払う利息等)は負債と資本の比率により制限があり、またその法人の調整後課税所得の50%を超える額を閾値として控除に制限がありました。改正法では基本的に全ての法人が利息制限の対象になり、純支払利息に対してその法人の調整後課税所得の30%を超える額が控除できなくなりました。ただ、全関係会社の売上合算額が$25,000,000以下の会社は例外となり適用されません。また、調整後課税所得や純支払利息の計算も関係会社と合算して計算することになると思います。(改正法適用開始時期:2018年1月1日に始まる課税年度より)
6. 欠損金の使用
旧法では欠損金は2年繰り戻すことができ、その後20年繰り越すことができました。また、通常の税金計算では課税所得を超える繰越欠損金がある場合には、繰越欠損金を全額使用でき、その年の課税所得をゼロにすることが可能でした。Alternative Minimum Taxの税金計算では繰越欠損金はその年の課税所得の90%までしか使用することができませんでした。そのため、通常の税金では課税所得は発生しないが、Alternative Minimum Taxでは10%の課税所得が残り、税金が発生するというケースがありました。
改正法ではAlternative Minimum Taxはなくなりましたが、繰越欠損金はその年の課税所得の80%までしか控除することができなくなりました。このため、今までは繰越欠損金があったので課税所得が発生しても税金を払わなくてすんでいたケースでも、改正法下では支払いが発生することになります。また、欠損金を繰り戻すことはできなくなりなりましたが、繰越は期限がなく永久にできることになりました。(改正法適用開始時期:2018年1月1日に始まる課税年度に発生した欠損金より)
7. 接待交際費
旧法では接待交際費(接待交際にかかる食費含)はビジネスに関連している場合には50%が控除できました。改正法では、接待交際費(接待交際にかかる食費含)は控除できなくなりました。接待交際ではなく他の要件を満たしたビジネスの食費は50%が控除できます。(改正法適用開始時期:2018年1月1日に使った接待交際費より)
8. Domestic Production Activities Deduction
旧法では米国内の製造/販売から発生する課税所得のうち要件を満たす課税所得の9%を所得控除できましたが、改正法では廃止されました。(改正法適用開始時期:2018年1月1日に始まる課税年度より)
以上