米国個人所得税確定申告シリーズ(3) 米国居住者・非居住者の判定
02.03.2023 | カテゴリー, Tax
シリーズ(3)では、税法上の米国居住者、非居住者の判定そして、居住者、非居住者の選定が個人確定申告に与える影響についてご案内いたします。
- 税法上の米国居住者、非居住者の判定
税法上の米国居住者、非居住者の判定は、永住権による判定であるグリーンカードテストと、米国滞在日数による判定である実質的滞在条件テストによって行います。また、F, J ビザ等で米国に滞在されている場合は、特別な規定が適用され、「Exempt Individual」として、米国滞在日数が、実質滞在条件テストから除外されることから、例え年間を通して米国に居住していたとしても、米国非居住者として扱われます。また、長期米国出張者の場合は、日米租税条約により、特定の条件を満たすことで、米国での課税が免除されます。
- グリーンカードテスト
米国市民権保持者あるいは、米国永住権保持者は、世界中どこに居住していても、米国居住者とみなされ、全世界ベースの収入が課税対象となります。
- 実質的滞在条件テスト(SPT: Substantial Presence Test)
- このテストを適用するためには、まず、申告年の合計米国滞在日数が31日以上である必要があります。 (申告年の米国滞在日数が30日以下の場合は、米国税法上非居住者となります。)
- 次に申告年を含む過去3年間の米国滞在日数を下記のように計算し、その合計日数が183日以上であれば、米国居住者とみなされます。
(申告年x 1) + (前年x1/3) + (前々年x 1/6) ≥ 183日
- 駐在員の場合で、申告年が赴任年あるいは帰任年となる場合は、実質的滞在条件テストをクリアすると、米国居住者期間が居住者、非居住期間が非居住者となる、二つの身分を併せ持つ二重身分(Dual Status)の扱いとなります。
- 米国居住者・非居住者の税法上の取り扱い
米国居住者と非居住者では課税対象所得や控除等の税法上の取り扱いが大きく異なります。
- 課税対象所得
まず、課税対象所得ですが、米国居住者は全世界ベースの所得が課税対象となります。一方、米国非居住者は米国源泉所得のみが課税対象となります。
- 控除
控除については、米国居住者は概算額控除あるいは項目別控除のうち、何れか節税に繋がる方を選択することができます。また、外国税額控除をとることができ、米国外で支払った所得税を控除することが可能です。
一方、米国非居住者の場合は、項目別控除のみの選択となり、概算額控除をとるか項目別控除をとるかの選択をすることはできません。また、通常外国税額控除をとることができません。
- 申告身分
申告身分の決定は、税額に大きな影響を与えます。既婚者の場合、通年で米国に居住されている場合は、申告身分を夫婦合算申告あるいは、 夫婦個別申告のどちらかを選択することができます。収入の額にもよりますが、多くの場合、夫婦合算申告の方が税率が低く、控除も広い範囲でとれることから有利となります。
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- 米国渡米年
二重身分となる渡米年には、既婚の場合、税法上選択を行うことにより、夫婦合算申告をすることが可能となります。渡米の年初は米国非居住者であるが、年の終わりには、夫婦がともに実質的滞在条件テストを満たし、米国居住者となる場合、米国渡米年を通年居住者として申告することが可能になります。また、配偶者を伴わずに渡米した場合にも、非居住者である配偶者を居住者にすることにより、夫婦合算申告が可能になります。
「First Year Election」は、渡米年度内に実質的滞在条件テストを満たすことができない場合も、3つの条件をみたすことで居住者としての申告が可能となる税法上の選択です。
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- 当該年度の滞在日数が連続で31日以上ある
- 滞在日数が連続31日ある滞在期間の初日から年末までの合計日数の75%以上である
- 翌年には実質的滞在条件テストをみたして居住者となる。