02.28.2025 | カテゴリー, Tax
シリーズ第4回目は外国人の居住者・非居住者の判定についてです。
確定申告の際、就労ビザで米国に滞在している外国人は税法上の居住身分を判定する必要があります。居住身分により課税所得、税率、控除等が異なるため、この判断は非常に重要になります。税法上の居住身分には居住者(Resident)、非居住者(Non-Resident)、もしくは米国への入国年、出国年には居住者と非居住者どちらの身分も併せ持つ二重身分(Dual Status)があります。
居住者(Resident)
米国市民権を有さない場合、米国居住者であるかどうかは。グリーンカードテストもしくは実質的滞在条件テストにより判定されます。居住者の場合、課税対象は全世界所得となり、Form 1040を申告します。結婚している場合は、夫婦合算申告もしくは夫婦別申告いずれかの選択肢があります。
米国永住権保持者はアメリカ滞在期間に関係なく、永住権を取得した時点で税法上居住者とみなされます。また、米国外で永住権を取得した場合は、米国に入国した日から居住者となります。
確定申告対象年度の米国滞在日数が31日以上、かつ過去3年間の米国滞在日数の合計が183日以上の場合、居住者とみなされます。183日という日数は3年間の滞在日数を加算するのではなく、下記のように計算されます。
<過去3年間の計算方法>
当該年度:米国滞在日数 + 前年度:米国滞在日数の1/3 + 前々年度:米国滞在日数の1/6
非居住者(Non-Resident)
グリーンカードテスト、実質的滞在条件テストの居住者条件を満たさなかった場合は非居住者となり、Form 1040NRを申告します。課税対象は米国源泉所得(米国での所得及び米国滞在中の本国からの給与所得)となります。既婚の場合も、非居住者は夫婦合算申告の適用は認められないため、夫婦別申告となります。
また、研究者や留学生等のJ、Fビザ保有者は連邦税法上「Exempt individual」に該当するため、実質的滞在条件テストによる滞在日数にかかわらず非居住者として扱われます。この場合、Form 1040NRに加え、Form 8843(Statement for Exempt Individuals and Individuals With a Medical Condition)を申告します。研究者や企業からの派遣留学生の場合、米国外の雇用主から支払われる給与所得・手当等は、米国外の雇用主が負担することを条件として非課税扱いとなります。但し、州税は連邦税と異なる取り扱いが適用される場合があるために、申告内容に留意が必要です。
二重身分(Dual Status)
米国に入国した年または出国した年は、米国居住者である期間と非居住者である期間を併せ持つ二重身分(Dual Status)となることがあります。二重身分での申告となった場合、居住者期間中は居住者身分として、非居住者期間中は非居住の身分として申告を行います。二重身分の場合、概算額控除(Standard Deductions)や夫婦合算での申告が認められないために、項目別控除(Itemized Deductions)および夫婦個別申告をする必要があります。
非居住者、二重身分となった場合でも、税法上の選択を行うことにより。居住者として申告を行うことが可能となるため、いろいろな状況を考慮した上で、節税効果の高い申告身分を選択することが大切です。
居住者の選択
米国に入国した年は実質的滞在条件テストの条件に満たない場合も、税法上の選択(7701(b)(4))を行うことにより、居住者としての取り扱いが可能になります。この選択の適用条件は以下となります。
(1)当該年度の米国滞在が連続31日以上ある
(2)当該年度の米国滞在日数が、連続31日以上ある滞在期間の、初日から12月31日までの合計日数の75%以上であること
(3)前年度は米国居住者ではないこと
(4)翌年が実質的滞在条件テストをみたして居住者となること
この選択を行った場合は、通常延長申請を提出し居住者としての条件を満たしてからの申告となります。
また、既婚の場合には、非居住者や二重身分と判定された場合も、通年での居住者として申告をすることが可能になる場合があります。